ちなみに、アオサギだけではなく、ゴイサギにも、夜中に青白く光る現象はいくつか言い伝えられています。ゴイサギは昼にも活動するアオサギよりもさらに明確な夜行性で、夜、さかんに空を飛び回り、暗闇で人に目撃されることの多い鳥です。アオサギやゴイサギの不可解な発光現象目撃譚を、羽毛への光の反射などの推測のほか、「発光バクテリアが付着したもの」とする説もあるのですが、鳥に発光バクテリアが付いていたという具体的な標本・見本があるわけではないので真偽は不明です。
ただ、夜間、星のように光りながら飛んでいる鳥らしきものの目撃例は現代になっても数多く、近年では撮影されたものすらあるために、実際夜間飛ぶ鳥が、アオサギやゴイサギに限らず何らかの原因で光ることがあるのは、かなり信憑性のある怪現象なのです。
このことについては現時点ではっきりと解明は出来ませんが、「青鷺火」「五位火」と言われます。なぜそれが強くアオサギと結びつくのか、という点については、そこに民族や時代を超えた人類の深層心理に横たわる集合無意識が関係しているのかもしれません。
古代エジプトではベンヌ(Bennu ベヌウ、ベヌ)とは、世界の始原に最初に誕生(自生)したとされる創造神話に関わる神で、その姿は壁画などでアオサギそのままの姿で描かれています。鳥が抱卵して雛を孵化させるように、ベンヌは太陽の卵を抱き、温めて孵化させた、という神話があります。そしてベンヌの鳴き声はこの世に時間の流れを生み出したとされます。
太陽の魂ともされるベンヌは不死であり、日没とともに死に、翌朝復活するとも、500年ごとに一度死に、脱皮して復活する、ともいわれます。これがギリシャに伝わると、西方に住む不死の鳥の伝説フェニックス(ポイニクス φοῖνιξ phoenix)の原型となり、復活する太陽神の神話はやがて、イエス・キリストの神格伝説を形成してゆくのです。
遠い昔に日本にも伝わってきたであろうアオサギの不死鳥伝説。私たちは無意識のうちにそのイメージを、「光る青鷺火」として重ね合わせて見ていたのかもしれません。
後編では「鷺舞」に関わる七夕伝説と、ある有名文学作品の描写の不可解、奇祭「ケンケト祭り」などについて叙述したいと思います。
(参考・参照)
熊本の野鳥百科 大田眞也 マインド
平家物語諸本紹介アオサギの鳴き声